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 カザンがいった。 「ウスノロ、声がちいさいぞ。なんでおまえの靴は濡れてんだ? 小便でももらしたのか」  目の前が真っ赤になりそうだった。ここでカザンをぶちのめしたら、どれほど気が晴れるだろうか。ぎゅっとこぶしを握り締めた。 「耐えろ、タツオ。こんなやつは名家に生まれたというだけのクズだ。きみとは違う。道端(みちばた)に落ちてる石ころだと思えばいい。きみが戦うべき本当の相手じゃない」  ジョージの低い声はタツオとほかのふたりの怒りを奇妙なほど静めてくれた。 「速く走れ、ウスノロ」  カザンの声を背に受けながら、3組1班は無言で校庭の周回にもどった。
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