6

2/5
354人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 気の強い東園寺(とうえんじ)家のお嬢さまだった。狙撃されて数分後に犯人捜しを始めている。 「いいや。あの人じゃないと思う。さっき先生はぼくの肩のにおいをかいでたよね。あのとき、ぼくも先生のにおいをかいでいた。あの人も硝煙(しょうえん)のにおいがしなかった。すくなくとも、撃ったのは先生でも、ぼくでもないよ」  廊下をばたばたと走ってくる足音が響いた。 「もう人がきちゃうね。まだ瑠子(るこ)さまの伝言を半分しか伝えてなかったんだ。タツオ、いい、よくきいてね。瑠子さまがあなたにいっていた。『わたしを助けて』って」  皇位継承権第二位の瑠子さまの言葉だった。なにか深い含みがあるのかもしれないが、意味がまったくわからない。いったい誰から助けてほしいのか。没落した逆島家の自分になにができるのだろう。近衛(このえ)四家をはずれた今、タツオは瑠子さまに近づくこともできない。相手は雲のうえの身分である。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!