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文化祭、修学旅行と学校行事のビッグイベントが相次いで終わり、晶子たちには学業に再び励む季節がやってきた。そんな折、伊藤直美先生がホームルームで進路指導の話をした。
「さあ、皆さん、修学旅行も終わり気分は落ち着いてきましたか?今日は、進路指導のお話をします。将来はどんな人間になりたいのか、皆さんひとりひとりに夢や希望があると思います。それを実現するためにこれから約一年半、どんなことに取り組めばいいのか、そんなことを皆さんと個別面談でお話ししたいと思います」
「進路指導なんてまだ早くないですか?」
廊下側の後ろから二番目に座る伊藤良平が手を挙げて発言した。
「そうかな。準備というのは遅いより早すぎる方が良いと、先生は思いますよ」
「個別面談はどんな順番でやるんですか?」
席が一番前の斎藤かおるがいつものように独りごとのように言った。
「そうね。出席簿順でどうかな?つまり、名前の順ってことね。えーと、朝倉さんがトップバッターで、次は有村君、伊藤君、大川君の順番ということね」
「そこで、俺の将来の夢とかを話すんですか?」
気恥しそうに、体格の良い大川賢一が真ん中の列の一番後ろの席から訊いた。
「そうよ。今度の進路指導では皆さんの将来の夢や希望をどう実現させていくか、ってことを話す機会にしたいから。先生は、大川君の夢とか聞くの楽しみだな」
その直美の言葉に、賢一は少し困った顔をした。
「まだ、何も考えてなくて、将来のことなんか何も決めてない人はどうするんですか?」
朋美がつまらなそうに手を挙げて、発言した。
「もちろん、そういう人もいると思いますが、自分の順番が来るまでにできるだけ将来の夢や希望を考えておいて欲しいのよ。これから、配るプリントにはそんなことを記入してもらいたいの。そして個別面談のときに持参して、それをもとにお話ししましょう」
「いつから、その個別面談を始めるんですか?」
晶子も手を挙げて、尋ねた。
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