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「わたしは、まだ分からない。でも、親の薦めもあるから一応、大学には行くつもり」
朋美は将来のことよりも、いまをもっと楽しみたいというのが本音のようだった。
翌日の放課後、直美の進路指導が英語のラボ室で始まった。トップバッターの晶子がラボ室に向ったあとの放課後の教室には良平と有村秀太が待機していた。賢一は部活をやりながら順番を待っているという話だった。
晶子がラボ室のドアをノックすると、中から直美の声がした。
「はーい。朝倉さんね、どうぞ」
晶子はドアを開けて後ろ手に閉めると、直美に促されるままに直美が座っている席の隣に座った。
「どう、進路は決めた?」
「はい、一応…」
「そう、じゃあ、記入したプリントを見せて」
晶子は、背負い鞄からプリントを出して直美の前に置いた。直美はそれを手に取り読んだ。
「そう、朝倉さんは将来、刑事さんになりたいの」
「はい。いまはそう思っています」
「そうだ、あなたの保護者の南雲さんは警視庁の刑事さんよね。それに影響されたかな」
「そうかもしれません。ただ、おじさんにはまだ相談していません」
「あなたがしっかりした考えを持っていることは先生わかってるわ。刑事さんは立派な職業よ。南雲さんとよくお話しして、あなたの希望をかなえるようにしたらいいと思う」
「はい。わたしはどうすれば刑事になれるのか、何も知りませんから。相談してみます」
「そうね。先生も公務員となって警察学校に進学することくらいしか、いまは分からないから、勉強するわ。また、お話ししましょう。進路指導はこれから何回もあるからね」
そう言うと、直美は晶子のプリントを自分のファイルに仕舞いこみながら、何か質問とか相談事がなければ面談はこれで終わりだと言った。そして、次の秀太に声を掛けたら、帰って良いと言った。
晶子が秀太にラボ室に行くよう伝えてから教室を出て階段を降りると、一階の廊下でかおるに遭った。
「かおる、何かわすれもの?」
「あっつ、晶子。そうか、今日は進路指導の個別面談に当たっていたのね。わたしは、賢一とデート」
「デート?学校で?賢一さんと?」
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