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ナツは回想している最中にも、いまだに落ちている缶を蹴り飛ばしながら、帰り道を歩いていた。
「あそこにしようかな」
ナツは蹴っていた空き缶を、そろそろ捨てたいと思ったので、帰り道の途中にある公園のゴミ箱にシュートをきめることにした。
「たぁッ!」
狙いを定めて蹴り飛ばされた空き缶は高く飛び、近くの公園のゴミ箱へ、吸い込まれるように飛んでいった。
そして、ゴミ箱へ、入るはずだった。
「あれ?」
しかし、その空き缶は美しい放物線を描きながら、公園へ入ろうとした瞬間に、公園の外へ、弾き飛ばされてしまった。
自分の前を転がる空き缶を見ながら、ナツは不思議そうに首を傾げていた。
まるでそこの空間にだけ、見えないバリアが張ってあるような感じだった。
「えっ?」
ナツが公園の前まで近づくと、あるもの、否、人影に気がついた。
「……………ッ!」
その公園で小学一年生くらいの小さな男の子が身動きひとつせず、倒れていた。
顔色も良くないようだった。
ナツは焦りに刈られ、公園の中へ入ろうとするが、なぜか、公園の中へは入ることができなかった。
空き缶の時と同じように、見えない何かに防がれているようだった。
「何に?ホントに何なの?」
ナツは直感的に、少年が危険であると感じていた。そういう、ナツにとって嫌な予感と言うのはよく当たるので、どうにかしてでも、少年の元へ行って確かめないといけない。そう、ナツは焦りながら考えていた。
「誰かいませんか?」
次にナツは、自分の力ではどうしようも出来ない、そう思った。なので、声を張り上げて、誰でもいいから助けを求めることにした。
ここは住宅街の真ん中、時間はお昼を過ぎたくらい。誰か来てくれるはずだった。
しかし。
「どうして?」
今まで、ナツは焦っていて気がつかなかったが、違和感を感じる。
それは、音だった。
圧倒的な無音。
足音、車のエンジン音、人の話し声、そのような、人がいればするような音が、住宅街の真ん中である、ここで一切、聞こえなかった。
それはまるで、一人だけ廃墟の町にいる。そんな、雰囲気だった。
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