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ナツは少しずつ、ジワジワと恐怖を感じ始めていた。
男の子の顔色も悪くなっている気がする。
ナツは自分の拳を硬く握りしめ、誰もいない住宅街の真ん中でーーー
今から五年前のナツは、今とはかけ離れた、静かでおとなしく、引っ込み思案な少女だった。
そんなある日、ナツは蓮に質問をしていた。
「どうすれば、レン兄ちゃんみたいに、なれますか?」
当時、小学五年生だったナツは、蓮のことを心から尊敬していた。だから、どうすれば蓮のような人になれるのかを知り、自分を変えたいと思っていた。
蓮は小さな少女の願いをしっかりと聞き入れ、しゃがみこみ、ナツと同じ目線で、真摯にこう答えた。
「人間には、どんな困難にも、立ち向かえる方法があるんですよ」
高校二年生だった蓮は、穏やかな口調で、優しく、穏やかに伝え始めた。
「どんな方法なの?」
微かで、途切れそうな声だった。
「簡単なことですよ。心を強くすればいいんです」
「心を強く?」
「そうです。挫けそうなとき、負けない心が大切なんですよ」
「どうすれば強くできるの?」
「それはですね…………」
その言葉が、今のナツを作ったと言っても過言ではない。
『アタシはアタシを信じるッ!』
ナツは腹の底から全力で叫んだ。
心の底から『信じる』それこそが、蓮が小さなナツに教えてくれた、心を強くする方法だった。
理由は分からないが、ナツはそう言うと全身をまとっていた、嫌な恐怖感が消え、心の中が落ち着いているようだった。
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