2人が本棚に入れています
本棚に追加
どうやっても、この教師からの、独特の雰囲気が醸し出す流れには一生、勝てないような気がしていた。
「ちなみに私の勝ちですよ」
「教師が賭け事をするのはダメじゃないの?それが本当なら、理事長に言いつけてやるわ」
「それは困りますねぇ」
これは久し振りに、ナツがこの教師に勝利を、確信した瞬間だった。
所詮は雇われの身、どんなことがあろうと、雇い主の理事の攻撃は抗えないはずだ。というのがナツの考えだった。
しかし、それはあっさりと。
「かけたと言っても、何もかけてないんですけどね」
打ち砕かれてしまった。
「私個人でしか、やってなかったんですけどね」
粉々に砕かれてしまった。
木っ端微塵、跡形もないとはこの事だった。
ナツは教師に遊ばれていたことに気がついた。
「何よ、レン兄ちゃ・・・・・」
「懐かしいねぇ、その呼ばれ方」
ナツの赤かった顔が噴火寸前の火山のように、さらに、赤くなってしまった。
そう、ナツとレン兄ちゃんこと朱東蓮は昔からの付き合いなのである。
ずっと昔、ナツが生まれたときから、お隣に住んでいた、家族ぐるみの付き合いで、何度も蓮にナツは遊んでもらったりもした。
だからこそ、ナツにとって天敵(そう思っているのはナツだけ)のような存在だった。
例えば・・・・
「いつになったら、ナツちゃんは結婚してくれるんだろうねぇ?」
「…………ッ!、うるさい、うるさい
うるさい、うるさぁーいッ!」
このような、過去にナツが言った話などである。
誰だってあるよね。小さい頃の優しいお兄ちゃんとかに憧れること、それはさ、仕方ないことだよね。ウンウン、仕方ない、仕方ない………仕方ないよね?(ナツ談)
「では、そろそろ始めましょうか、安藤さん」
ナツはやはり、蓮の雰囲気が醸し出す流れには一生勝てないような気を、改めてしていた。
蓮がナツを安藤さんと呼ぶときは教師モードの時のことなのである。こうなると諦めて勉強をした方が早いと言うことは、ここ数ヵ月で理解をしていた。
「よろしくお願いします」
二人きりの、面白味もない、ただの授業(補習の遅刻した分)が始まった。
最初のコメントを投稿しよう!