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「ところで、運命をナツちゃんは信じていますか?」
何を言っているのか、ナツには、さっぱり分からなかったが、普段から、このような小難しい話をするのが蓮なので、仕方なさと、興味本意の半々の感情で聞くことにした。
「運命ねぇ、アタシは信じてるよ。そっちの方が面白いもんね」
ナツは昔から、このような性格だった。
面白いなら、そっちの方へ、そうしながら今日まで生きてきた。
「ナツちゃんらしいねぇ。私は信じてないんですよ」
「その心は?」
「この世界は、すべて決まっている流れを生きている。私はそう思うんですよ」
「なるほどねぇ」
「だからこそ、運命なんてものは、存在しないと思うんですよ。決まっていることに対して[運]なんて言うのは、おかしいですからね」
ナツはこのような小難しい話が、外見や性格に似合わず、結構好きだった。
自分の中に存在しないと考え方は、いつ聞いても、面白いものだとナツは思っていた。
だからこそ、ナツは蓮と話をするのが好きだった。
「そうなのかな?アタシはそうは思わないけどね」
そして、自分の意見を相手にぶつけるのも、好きなことであった。
「蓮さんの考え方は面白いと思うわ、でも、やっぱり、アタシはもっと面白い世界を想像するわ。確かに蓮さんの言う通り、人生は一本の流れなのかもしれない、そこはアタシもそう思うわ。でも、違うのはここから。運命って言うのは、人生の流れの分岐点のことだと、アタシは想像するわ。何か、確証はないけど、自分で選べるなんて、そっちの方が面白いに決まっているじゃないッ!」
ナツは少し熱くなりすぎたかなと、反省をしていた。
「面白い考え方ですね。ナツちゃんと話していると、楽しいと思えますよ」
蓮は拍手をしながら、少し照れていたナツに対して、称賛の言葉を送った。
ここからなのだろうか、運命が動いたのは?
それとも、もっと前に運命は分岐していたのだろうか?
でも、確かにナツの運命は動き出していた。
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