白銀の彼方で

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────気づけば私は倒れ、人骨のように澱んだ鉛雲を見上げていた。 「……う、ッ」 ────寒い。 当然だ。真冬の雪山で着物姿で倒れ込んでいるのだから。無論、初めからそんな軽装で雪山に行くほど、頭がお花畑ではない自覚はある。……多分、いや、絶対だ。 寒さから身を守る〝術式〟を発動していたが、そんな体力は既に残されていなかった。全身は傷だらけで、肉を抉りとってでも外したいような、焦れったい鈍い痛みがそこらじゅうを這いずり回っていた。 どうやら痛みで一瞬気を失っていたらしいが、またその痛みで意識を取り戻すとは、なかなかどうして皮肉なものだろう。 全くもって、おかしかった。全部全部全部全部、喜劇じみていて自分の事ながら笑えてしまう。なにもできず、何を成し遂げることもなく、何も残せず、たった一人で死んでいく────ああ、なんて可哀想な生き物なのだろう。 闘志など迅うに消え失せていた。戦いで火照っていた体は既に冷め、諦観の念が私を支配している。起き上がる力など、望むべくもない。起きようという気力すらないのだから。最早、命は風前の灯。
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