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「そんなに強い敵なのか」
竜崎の問いに何の意図があるのか思い浮かばず、五条啓吾は逡巡する。
正直に岡田以蔵と共に暴れ回っている男だと答えたらどうなるだろうか。下手をすれば、竜崎春人単身で突っ込みかねない。それだけは避けねばなるまい。
「ああ、奴はつえぇ。二人がかりで戦っても勝ち目はねぇ。だから、今は逃げるぞ」
「分かったッ」
その短い了承の言葉がどれ程の安堵をもたらしたのか。五条啓吾は心裡に息を吐く。
さて、とはいうものの、状況は予断を許さないことに変わり無い。速さは向こうに分がある。このままではいずれ追い付かれる。追いつかれれば、殺される。
(何かいい案はないか……)
欲を言えば、増援が欲しい。だが、白谷麗花は隣町への要請でおらず、雪乃も京都にあると言う陰陽師本家に呼び出されている。二人ともいつ帰ってくるかなど、分からない。
(――――曹平)
もう彼しかいない。どうにかこうにか逃げ続け、曹平の助けを待つ。方針は固まった。
「逃げるは良いが、作戦はあるのか!? 相手は此方よりも速い。いずれ追い付かれるのは目に見えてるぞッ」
竜崎からの問いに、思わず口角が上がる。やるしかないと。
「俺に考えがあるッ」
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