夜街を襲う騒乱

77/86
前へ
/211ページ
次へ
疾走する。闇の中を。雷神が激昂し、狂ったように雨や風が吹き荒れる。 逃走を始め、さほど時間は経っていない。にも関わらず、体を強張らせる緊張感が、いつにも増して体内時計を狂わせていた。 「まずいぞ、どんどん近づかれているッ!」 五条啓吾の背中に捕まる竜崎が叫んだ。 振り返る。思わず目を剥いた。思っていたよりもかなり距離が近い。このままでは数分ともたず、追いつかれる。 「竜崎、陰陽術はッ!?」 「今の状態じゃ無理だッ!」 歯噛みする。 (仕方ねえ。予定よりも少し早いが……) 「――――なッ!?」 竜崎は驚きに声を上げた。無理もない。突如自身達の周りに狼がホウと浮かび上がったのだから。それらは並走し、 「いけッ」 五条啓吾の生成からの間髪入れない号令で、後方へと駆けていった。五頭の霊力で作られた狼は大口を開け、後方の絹方へと肉薄する。 狼の生成から互いの衝突まで、目測五秒といったところか。 狼達と絹方。互いの疾走により激突は必須だ。それに絹方から見れば、一瞬で湧いて出た狼が瞬く間に目の前に来たのだ。その対処方法すら、思いつく間も無かろう。
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!

80人が本棚に入れています
本棚に追加