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疾走する。闇の中を。雷神が激昂し、狂ったように雨や風が吹き荒れる。
逃走を始め、さほど時間は経っていない。にも関わらず、体を強張らせる緊張感が、いつにも増して体内時計を狂わせていた。
「まずいぞ、どんどん近づかれているッ!」
五条啓吾の背中に捕まる竜崎が叫んだ。
振り返る。思わず目を剥いた。思っていたよりもかなり距離が近い。このままでは数分ともたず、追いつかれる。
「竜崎、陰陽術はッ!?」
「今の状態じゃ無理だッ!」
歯噛みする。
(仕方ねえ。予定よりも少し早いが……)
「――――なッ!?」
竜崎は驚きに声を上げた。無理もない。突如自身達の周りに狼がホウと浮かび上がったのだから。それらは並走し、
「いけッ」
五条啓吾の生成からの間髪入れない号令で、後方へと駆けていった。五頭の霊力で作られた狼は大口を開け、後方の絹方へと肉薄する。
狼の生成から互いの衝突まで、目測五秒といったところか。
狼達と絹方。互いの疾走により激突は必須だ。それに絹方から見れば、一瞬で湧いて出た狼が瞬く間に目の前に来たのだ。その対処方法すら、思いつく間も無かろう。
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