夜街を襲う騒乱

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――――おかしい。肉薄していた狼が、気づけば三頭になっている。 「――――は、?」 考える間もなく、二筋の赤い閃光が闇夜を切り裂いた。その勢いのまま狼を突っ切っていく。塵芥の如く宙へと還る狼。五匹いた狼は、残り一頭のみ。 一体何が、起こったのか。理解すら叶わない。 だが、幸いにも残りの一匹が、絹方の首元に標準を定めている。後はその大口を閉じれば、絹方の首と胴は別たれる。 …………口を閉じるだけ。たったそれだけの動作なのに、何故こうも焦ったく感じてしまうのか。あまりに、時間の経過が遅い。 口が動く暇(いとま)も無かった。数多の黄色の閃光が、道路から湧いたかと思うと、狼を紙のように切り裂いていった。 全ての狼が一瞬で消えた。もう少し、手こずるだろう。そう考えていたが、その目算は飛んだお門違いだった。 ――――――――自身の能力は時間稼ぎにもなりはしない。その事実が、重く五条啓吾へとのし掛かった。 だが。 「来るぞッ!!」 その声で、我に還る。どうやら、先程狼を切り裂いた黄色の閃光は打ち上げ花火のようにそのまま宙へと高く飛んだ後、雷雲を背後に一旦停止し――――狙っている、自分達を。 暗黒の中、不気味に浮かび上がる不吉の星々。数など数えたくもない。命を脅かされる感覚に身が凍る。 転瞬、宙の煌きは閃いたかと思うと流星の如く。獰猛な速度で以て、次々と二人へ襲いかかる――――!! 「――――避けろッ」 竜崎が五条啓吾を突き飛ばした。五条啓吾は慣性の法則を感じつつ吹っ飛ばされながら、もといた場所を見遣る。
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