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とてつもない速度で落ちる鳥達が視認出来た。悪寒が走る。あれに突っ込まれなどしたら、ひとたまりも無い。文字通り、蜂の巣になっていたことだろう。
危機は避けた。だが、状況は予断を許すまい。何故なら、その攻撃をした絹方本人が後方より近づいてきているのだから。
絹方がいるであろう方向を見る。
絹方が地面へと降り立ち、こちらを値踏みするように見下ろしていた。すぐ後に、泥だらけの竜崎が近くへと庇い立つ。自身も見れば、雨と泥で酷い有様だ。どうやら、自分達は工事現場へと追いやられたらしい。
絹方が軽薄に歪んだ口を開く。
「――――で? 終点ってところか?」
「.............................」
五条啓吾はすぐに応えない。少しでも時間を稼げば、それだけ生き残る確率が上がる。
「――――ああ」
腹より覚悟の乗った声が出た。
「ここがお前の終着点だよ、クソッタレが」
その言葉と共に無数のオオカミが現れた。その数、百は下るまい。
「...............へえ、こりゃなかなかに壮観だ」
絹方は子供のように嬉々とした笑みを浮かべた。
「行くぜ、春人」
「お前に言われるまでもない」
かくして、いよいよ戦闘が始まる。
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