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戦闘の火蓋は五条啓吾によって落とされた。
「行けッ!!」
号令を周囲に群がる狼にかけた。
「おいおい、それはさっき無駄だって教えた筈だぜ?」
絹方の呆れた物言いなど、気に留める様子もない。
目的は別のところにあるのだから。
「黄昏に染む大空を切り開き、陰を除むることを乞わん――――」
狼達が疾駆する中、竜崎春人が呪咀を紡いだ。竜崎の足元に穴が空き、中から黒々とした刀の柄が顕れる。続いて現れるは蒼い刀身。今宵の蒼月は彼の手に在ったか……そう思わせるような黎明な灯りを以て顕現する。
――――百足丸。百足に由来する妖刀が、竜崎春人の手に握られた。
(成程、得物を出すまでの時間稼ぎってことか)
「そんな事するまでもねぇよ。出せよ、武器でもなんでも」
絹方から発せられていた殺気が止んだ。
「なんだと?」
刀身を抜きつつ怪訝に問う竜崎に、絹方が応えた。
「確かに俺達の目下の目的は竜崎の捕獲だ。けど、俺個人の目的はお前との闘いだよ、竜崎」
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