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「どういう事だ?」
五条啓吾もここぞとばかりに問う。貴重な情報をペラペラと話してくれる。それに、時間も稼げる。二人としては好都合だ。
「陰陽師とやれる機会なんて、そうねぇからよ。一度やってみたかったんだよな、陰陽師とよ」
嬉々としてそう語る様子は、恐らく本音なのだろう。
「話に聞くばかりでよお。待ちに待って、ようやくの対面なんだ。だから、出せよ。得物でも式神でも」
こうは言うが、その実のところ、竜崎を侮っているとも取れる。
「後悔するなよ」
「ハハッ、己が信念の上で死ねるなら、漢の本望よ」
売り言葉に買い言葉。
竜崎が刀を一文字に振るう。すると、三尺はあろうかという百足達が一斉に絹方へと向かった。その数、十はゆうに超える。
「ハァン。モノが変わっても、やってることは同じじゃねぇか」
期待はずれと言わんばかりに嘆息した。
数羽の赤の鳥が絹方の周囲に現れ、羽ばたいた。二尺ほどはあろうか、という図体は姿形は鷹の如し。それらが百足の群れへと突進した。百足は鷹の数倍の体躯があり、太さも五寸はある。にも関わらず、絹方は己の鳥が勝ると確信している様子だ。
(あの鳥に何か細工があるか?)
竜崎春人の考えをよそに、百足と赤色の鷹が互いに衝突する。 ――――百足は鷹を破壊すると、絹方へとその勢いのまま突き進む。
「はぁ!?!?」
今度は絹方が驚きの声を上げた。馬鹿なと。
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