夜街を襲う騒乱

84/86
前へ
/211ページ
次へ
宙へと昇った隼が下降し始めた。標的は百足。百足が放たれた弩弓の様に貫かれ、闇に逃げるように消失していった。 その光景を見て、満足げに絹方は頷いた。 「ああ、ああ。そっちの方だったか? その百足、真っ向からにはつえぇが、その他の方向から攻撃されると脆いようだな」 竜崎は内心に舌打ちをした。この男、あまりに戦いに慣れ過ぎている。 (百足に付与した〝不退転〟の呪いをこうも短い時間で見破られるとは……) 毘沙門天の使いである百足は、後退しないという俗信より、不退転の象徴として描かれることがしばしばある。それ故、召喚した百足達に「前方との衝突に必ず打ち克つ」という呪いをもたらした。 竜崎と五条としては、百足に四苦八苦するところを狼で奇襲するつもりであったが、それに繋がる隙が一向に生じない。 (百足は全て出し切った……。五条の狼は――――) 隣の五条を見て、目を思わず見開いた。彼は既に肩で息をしている。体に大した外傷はないように見えるが、狼を一度に大量に生成した影響なのだろうか、既に満身創痍といった体だ。想像以上の状況の悪さに、竜崎は歯噛みする。 「それとよお」 こちらの焦燥を読み取ったのか、追い討ちをかけるかのように絹方が口を開いた。
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!

80人が本棚に入れています
本棚に追加