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「なにやら援軍を期待してるようだが、待っていても永遠に来ないぜ」
「――――なに?」
何を言っているのか、理解できなかった。
「俺が単独で突っ込んだって思ってるなら、そりゃ頭花畑ってもんだぜ? こうしてる間にも、始まってるんじゃねえか?」
――――――――風雨に紛れ、聞こえるは喧騒か。爆発音、たくさんの足音、人の……、悲鳴。
絹方が舌打ちをした。
「――――チッ。一般人まで襲ってやがんのか。そりゃ悪手ってモンだろうがよ。ってなると、リリーもやってやがんのか? ……可哀想に。あいつ、あんな顔してやる事えげつねえからな」
「可哀想に」そういう男の表情は――――本当に同情しているようにも見える。だが、その惨劇の中心にいるのは、この男達だ。
「お前、なにが『可哀想に』だよッ! お前達が自分達の欲望を叶える為に、なんで何も知らねえ人間達が犠牲にならなきゃいけねぇんだよ! クソッ、竜崎……ッ!」
「俺がこの場を食い止めるッ! ……だから、お前が街の人達を助けて――――」
竜崎春人は首を振った。
「それは、逆だ」
その言葉に五条啓吾は黙った。確かに、〝その通りだ〟と思ってしまったから。
「――――――――」
「五条、お前の能力の武器は間違いなくその〝足〟だ。ここは俺が引き受ける。だから早く行け」
「…………竜崎」
「『陰より陽を泰平にするのが我らが陰陽師が務め』よく姉弟子が言っていた事だ。俺はそれに殉じているだけのこと」
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