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一面の銀世界を走って、走って、走り抜いて。そうして行き着いた先にあったのは────。
「……あ」
────悪夢だ。
雪、雪、雪、木、木、枯葉、雪、木、樹、枯葉……雨、────血。
血? ────そうか、夢か。そうだ、これは夢に過ぎない。だから、目の前の〝それ〟も思考の成す形骸でしか無い。悲嘆する必要などないのだ。時期に目が醒める。だから、早く醒めろ、この悪夢から。
されど、悴(かじか)む手が、突き抜ける冷風が、そして、胸で暴れ狂う心臓が、どうしようもなく現実を突き付ける。
少年の自失呆然とした視線の先には、朱に染まる雪の上に一人の少女。その亡骸が、ゴミも同然に棄てられていた。気付けば、さめざめと雨が降っている。
よろよろと少年は覚束ない足取りで、少女へと歩み寄る。恐怖が熱を奪い、火照っていた身体は芯から冷えゆく。
少年は少女の前で立ち止まり、そして力なく膝から崩れ落ちた。
「あぁ……」
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