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────いや、全てはできない自分からの逃げ道か。
情けなくなり、ため息が再度漏れ出てしまう。別に出来なくとも自分自身は構わないのだが、これをあの世の叶坂亜豆奈が知れば、侮蔑の眼差しを送っていたことだろう。自他共に厳しかった彼女なら、きっとそうしていたに違いない。
────心に穴が空いている。一生埋まることのない、空虚な腔が。そこからどろりどろりと怨嗟が零れ落ち、心底に溜まっている。ずっと、ずっと。
.............ぐるる。
閑話休題。自らの腹の虫が鳴り、思考を切る。
(寝起きだ。頭が回らん。飯でも食うか.......)
そう思い立ち、少年は購買へと急ぐ。
その五分後にはパックに詰められた五個の唐揚げと鮭のおにぎりを買って教室に戻ってきた。
唐揚げを一つ摘み、思う。 ────今夜のことを考えなければ、と。
毎晩、叶坂亜豆奈を殺した犯人を追い求め夜な夜な捜索しているが、これが全く成果が芳しくない。どうにかしなければいけないのだが、これと言って打つ手がなかった。
自らが所属している陰陽師の集団────〝陰陽寮〟に応援を求めることはできるが、それも避けたかった。彼女の仇は、自らの手で討ちたい。そんな想いからだ。
それに自分が声をかけても来るような奴らは、揃いも揃って頭のおかしな連中しかいない。尤も頭のネジの一つや二つ飛んでいなければ、陰陽師は務まらないことだろう。実際に鬼に食い散らされた死体を目の当たりすることも、少なからずある。勿論、少年自身も幾度となくその場面に遭遇した。凄惨な現場に耐えることが出来ず、辞めていった人間も少なからずいる。神経が図太くなくては精神を平常を保つことなど、この生業では困難だろう。
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