第1話

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僕がこの職場に来て、半年になる。 その前は特別擁護老人ホームで働いていたが、人間関係でトラブって辞めてしまった。丁度、介護職の職業病とも言える腰痛の悪化もあり、医師からも休養を勧められていた背景もあり、半年ほど仕事をせずに治療に専念……と言えば聞こえは良いが、プー太郎をしていたわけなんだが。いざ、三十路を目前に「このままじゃヤバイ」と思ったものの、なかなか仕事は見つからない。やっぱり、もう少し頑張って、ケアマネージャーでも取るしかないと、腹を括ってきたのがこの会社だ。 木村主任は初日から指導についてくれていて、実は俺の一目惚れ。 キリリとしているのに、入居者さんには優しく、教え方もきちんとしていた。前の職場で、女性ばかりで、足のひっぱり合いも多かったことや、他の人のミスを押しつけられたり、重要な事を教えてもらえなかったりしたので、普通に接してもらうだけでもホッとした。しかも半年も仕事をしていなかったものだから、ボケボケでミスも多い僕なのに、木村主任は辛抱強く付き合ってくれた。 頭が上がらないとはこの事だ。
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