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「殺す……ッ!!殺す殺す殺す殺す殺す!!なんとしてでも殺す!!跡形無く際限なく殺し尽くしてやるよ、山内ィィィィィィィ!!」
咆哮。
喉が張り裂け千切れんばかりの絶叫としか思えない咆哮を上げた少女・田中花子は、目を血走らせ、鬼の形相を浮かべて、その蝋燭のような四肢の全てに、あかい──……赤く、紅く、朱い、複雑な文字、複雑な紋様──まるで何が記されているのか全く分からない魔法陣を展開させた。
それは破滅を。
それは殲滅を。
それは絶滅を。
それは壊滅を呼び寄せ、何もかも、ありとあらゆる総ての罪を払拭する為の、忠義と、正義と、自慰の魔法を。自分の無力感を払拭する為の、どうしようもなく、そしてまたどうされようもない、自己満足の魔法を此の世に具現する為の、最悪にして災厄の魔法陣。
「滅べ愚民!!私の道を邪魔する屑は、罪人以外の何者でも無い!!」
その悲鳴にも近い怒鳴り声は、空気を震わせ、そして、『大地を割った』。
そう──田中は発動したのだ。
魔法を。
最悪にして災厄の魔法を。
『忠義の為の串刺し』を。
その刹那──否、刹那などと表現するにはあまりにも迅い、そして迅すぎる速度で、田中と山内の足元に、無数の──数える事が馬鹿らしくさえなってくる程の、夥しい数の杭が突き抜けて生え出る。
それは、忠義の為とはとても思えない、禍々しく、血なまぐさい、杭。
それは、忠義の為でもなんでもない、忌々しく、気色の悪くなる、鋼鉄の杭。
ソレは、発動した途端に罪人を──『山内太郎』を徹底して徹底的に串刺して、串刺して、串刺して、串刺して、串刺しにした魔杭。
ソレは、とてもじゃないが反応なんてできない、罪人に与える鉄槌の為の、罪人のありとあらゆる総てを捻り潰して串刺しを享受させる、血涙の鉄杭。
そう──勝負は決まっていたのだ。
……いやこれは最早勝負でも何でもない。
只の──蹂躙だ。
そうつまり、蹂躙は決定されていたのだ。
田中花子が、真紅にして深紅の魔法陣を四肢に展開した時点で。
田中花子が、最悪にして災厄の魔法を発動すると決めた時点で。
罪人に罰を逃れる術など、無いのだから。
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