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そこに立っていたのは、一人の長身の男。
男は、
汚れやシワ一つ無い漆黒のスーツを身に纏い、
眉間に刻まれたしわを深くして、輝きの薄い眼で二人を見つめた。
その顔はどことなく潤一に似ていた。
「やっぱりこっちにいたのか、潤一」
「…親父」
この男は、潤一の父親。
ポカンと口を開けたままの勇をよそに、潤一は父親に言った。
「…こっちの方が俺、好きだからさ」
「そうか」
潤一の父はそう短く言い、少し間があってから勇に目をやって、言った。
「そこの彼は」
はっと我にかえった勇は、深いお辞儀をした。
「えっと、勇といいます。
それで…僕は潤一君の…」
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