第2話

11/12
前へ
/12ページ
次へ
「着ていかれますか?」  会計をしている最中の店員さんのこの言葉により、再度試着室に入ったアゲハは買ったばかりのワンピースを着て出てきた。  淡いブルーの生地で、裾の部分に二段のフレアがついている。後ろには首の付け根あたりに、生地と同じ色の紐で大きなリボンが結ばれている。  アゲハの真っ黒い長い髪と淡いブルーのワンピースの作るコントラストが、パソコンで見たキアゲハ蝶の翅を思わせる。  試着室の脇にある大きな鏡を何故か凝視しているアゲハ。  自分の姿が映っているのが不思議なのかと思っていたら、急にこっちを向いた。 「かいと、ありがと!」  花が咲いたように笑う。  僕は、一瞬息が止まってしまって、上手く返事ができなかった。でも、そんなことは気にしてないように、ニコニコしているアゲハを見て、僕の頬は自然と緩んだ。  なんだか、アゲハの周りだけ、色が増したような気がした。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加