第2話

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「ちょっと休んでいい?」  ショッピングセンターに来て、約一時間半。僕は今まで感じたことのない疲労に襲われていた。蝶であるアゲハがおかしな振る舞いをしたらどうしようとか最初は思っていたけど、それは杞憂に終わった。  結局おかしな言動をしたのは僕の方で、その結果、疲弊している。  目についたファーストフード店に入り、バーガーとドリンクを注文。 「アゲハが食べられるものがないんだ。ごめんね」 「ううん」 「お腹すかない?」 「まだ、へいき」  朝、アゲハがキアゲハ蝶だと確定したあと、僕は再度『餌』を検索した。その結果、キアゲハ蝶の飼育にはハチミツを水で薄めたものを与えればいいことがわかった。そして、一日二回くらいがいいということも。  一応、僕のトーストを千切って渡してみたけど、口にあてるなり、いらないと返された。だから僕は、朝食を食べた後、開店したばかりのスーパーにハチミツを買いに行ったのだ。そして、調べた通りにハチミツを水で割り、アゲハの食事を作った。  すでに午前中の食事を終えているアゲハは、まだお腹はすいていないらしいから、食事については、蝶のときと同じと考えて問題なさそうだ。  二人掛けのテーブルに向かい合って座り、僕はさっそく食べ始める。 「それなに?」 「バーガー。パンに肉とか野菜を挟んだ食べ物」 「こっちは?」 「これはコーラ。飲み物」  僕の食事の間、アゲハはきょろきょろと周りを見てはいろんな質問を投げてきた。  あれは何、これは何、何をするものなの、などなど。赤ちゃんには、「ちいさい」「かわいい」と言って笑った。  子供連れが多いなか、僕と同い年かそれより少し若い人たちも結構いることに今更ながら気付く。当たり前だ、夏休みなんだから。  にしても、カップル、多いな……。
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