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約一週間前、俺は始めてあちら側ーーーいや、この世界に降り立った。便宜上、リールライと読んでおこう。俺の世界で、他人の家、と言う意味だ。
本来世界同士は渡れるような距離感ではなくーーーというよりまず、距離という概念すら通用しないものだ。
しかし、俺の世界とこの世界は、契約という儀式でつながっている以上、案外近づいている地点もある。
その中で、きちんと地上であり、なおかつ付近に意思を持つ生物の存在しない場所を選んだ結果、深い深い森の中に吐き出された。
そんな訳でリールライにやってきた俺がまず始めにやったことが、地形の把握であったことは言うまでもない。
名も知らぬ誰かの頭から借りて来た地図によれば、そこは大きな大陸の、ちょうど真ん中付近であった。
この大陸ーー後で知ったことによれば、クシュタルトには、小国が十数個点在するものの、大きく分けて二つの国が勢力を誇るらしい。そして、俺が降り立った密林が、その二つ、レミオルドとナターレの国境となっている。
他にも大陸はあるらしいが、目ぼしい情報もないため、割愛。
国に関しても、二国とも王政らしいが俺の目的を果たす上で邪魔にはならないと判断して、常識レベルの知識を得たところでストップ。
ちなみに言うと、俺の目的は大きく分けて二つある。
一つが事件に関して。
理由を調査し必要とあれば対処する事。ここで大事なのが、必要とあれば、というところだ。
前にも触れた通り、俺は保護者ではないので、犯人、或いは元凶を見つけたところでこれ以上被害を増やさないために、対処する義理はない。
そこで、二つ目の目的。
ただの観光だ。
遠いようで近いこの世界を見てみたい、というのが主な目的ーーーと言うのは口に出したらクリマに叱られるな。
やはりこれも契約の影響か、数の数え方や時間、季節に関しては俺の世界とほぼ同じ。多少違うところがあるとすれば、呼び方くらいだが、それくらいは問題ない。
なんだかんだ、ここで暮らすには不足ないほどの常識を手にいれたところで、とりあえず、南に位置するナターレ側へ向けて森を抜け、ある程度の大きさの街に滞在し、今に至る。
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