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俺がわざわざ街にまで出向いたのには理由がある。
見てみたかったのだ。
この世界でのチカラを。
言葉に力を持たせる言霊の術(すべ)。ここではカタリ、などとも呼ばれるらしいが、それがここでの所謂、異能。そして言霊には、俺の世界で使われる魔法と違い、その力を何倍にも増幅させるある媒体が存在する。
それが、魔を含む本、マガキ。こちら風に言えば、魔本。
図らずも俺がこちらまで来ることになった要因である。
ーーーなぜか。
それは笑えることに、そのマガキが俺の世界の本だからだ。
いつ、どうやって、世界を越えてここへマガキが届けられたかは俺にすら分からない。
ただ、いつの間にかこちらの世界で、契約の儀式により俺の世界に干渉し、本を持つ人間と契約することで、その本を読む権利を得る、というシステムが確立したことは事実だ。
これは俺としては、あまり面白くない。
俺の世界は俺の管理下であり、そこに勝手に干渉し、さらには管理下のモノに手を出しているのだから当然だ。
いつだったか、世界中のマガキに成り得る本を全て燃やしてしまおうとしたことがあった。その時は友人に必死に止められ、思いつきだったこともあり、数冊でやめたのだが。
今思うと、あの時一冊残らず燃やしてしまった方が良かったかもしれない。
まあ、とりあえず、今はここへ来た目的を果たそうと、街を観察しているが。
今のところ、ほとんどただの観光になってしまっているのが現状だ。
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