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もともと俺は、契約の場面をこちら側から観察することで不可解を解決してやろう、と思っていたのだが、実際、契約どころか、言霊が使われる場面自体が極めて少ない。
と言うのも、一週間限りではあるが見ていたところ、どうも言霊というのは誰もが使えるわけではないようなのだ。
これはちょっとした驚きだった。
俺の世界では力の格差こそあれ、魔法が使えない、なんてことは絶対にない。
もうそれは、どうやって息をしてるのか、と聞くようなものだから、気にもしていなかった。
さて。
俺はこれから低確率で遭遇する言霊使いが低頻度で行う契約の場面を探さなくてはならないのか………と思いきや、そうでもないらしい。
それとなく言霊使いについて街の人間に聞いてみた時だった。
「学園?」
「ああ。兄ちゃん知らねぇのかい?カタリなんて学園でぐらいしかお目にかかれねぇだろ。」
と言うことだ。
曰く、言霊使い専門の国立学園が存在し、さらに契約もその時期に終えるカタリが多いそうだ。
ついてることに、この世界では学園は秋、つまり今から一ヶ月後に始まる。
学園の生徒は卒業後、主に軍に所属するそうで、これも言霊使いのレアさに拍車をかけていると言う訳だ。 流石に俺は軍に入ってここの治安維持に協力するつもりはない。
なので、このまま街を渡り歩いても契約を見れない以上、今から言霊使いを見つけてオトモダチになるよりは学園でしばらく過ごしている方がよっぽどマシだと思う。
……主に俺の面白さ的には。
せっかくなので、一年生からやってみよう、と思いつき、入学の準備は済ませておいた。三年間ぐらい遊んでいたって何も言われないだろう。
入学申し込み期限ぎりぎりで間に合ったところはもう、運としか言いようがない。
必要な個人情報は適当な地名と経歴をでっち上げた。
名前は少し迷ったのだが、キルハ・カラードと記入。
向こうではあからさまな偽名だが、一番使う名前な上、気づくものもいないだろう。向こうの古語なんて、ただでさえ知る者が少ないのだ。
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