序章

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誰にともなく呟くと、彼は先ほどまで眺めていた本を無造作に投げ捨てた。 綺麗な放物線を描いたそれは、しかし、地面にぶつかる前に空気に溶けるように消え失せる。 それを見届けぬまま彼はひらりと身を翻し、その場を離れて行った。 後には不自然に抉り取られた大地だけが、黒々と残される。 そしてその黒の上に、ふわり、と。 彼の残した笑い声が舞い落ちた。
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