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その内容と込められた意図を正確に把握した俺は、思わずニヤリと笑ってしまう。
ああ、こいつは………俺の事をよく分かってるじゃないか。
「ああ、そうだ。あいつらはあちらとの契約の際に、未確認の方法で殺された。」
笑う。ワラう。
管理者の俺が笑うのだから、この世界すらもワラう。
「ええ、そうね。そしてそれはここを管理するあなたにとっては由々しき事態、よね?」
話し出した俺に、いたずらが成功したかのように笑って、彼女は続けた。
実際、その通り。
最も、この場合由々しいのは俺の威信ではなく、プライド、と言ったところか。
管理と言っても保護してるわけではないので、解決してやる義理はない。しかしまあ俺としては、見逃してはいけない問題であるのは事実。
そして彼女の取り出した…
「俺に、あちら側に行け、と。」
あちら側、つまり契約相手のいる世界に関する資料。
本当に笑ってしまう。
俺をその気にさせるには十分、十分すぎる。
よくもまあ考えついたと褒めてやりたい。俺以外に言えば、死ににいけと言っているようなものなのだから。
「いいだろう。行ってやるよ。」
あちら側。興味はある。
ならばこいつの策に乗ってやろうじゃないか。
「ふふ。
なら幸運を祈ってるわ、キルハ。我らが王よ。」
おどけたように送り出すクリマの言葉を背に受けながら、俺の頭は既にこれからの計画で一杯だった。
夏は嫌いだ。
だが。しかし。
ーーーこんな面白い季節が他にあるだろうか。
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