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やがて、いつもの撮影スタジオに着き、スタッフ達は樹利と共に入って来た可愛を見て、
「あら、可愛ちゃん、平日の昼間に付き人なんて珍しいのね。大学は休みなの?」
と声を揃えてそう尋ねた。
自分に言われている感がなくシレッとしている樹利に、『樹利さん』と可愛が小声でそっと肘で突いた。
「―――あ、俺か。
そうです、今日学校休みなんですぅ」
慌てて笑顔で会釈した樹利に、スタッフ達は『今一瞬、俺って言った?』と目を開くも、いつもの笑顔を見せているその姿に『きっと、気のせいだよね』と笑みを返した。
「あ、樹利君、今日はモデルの愛羅とだから」
その言葉に可愛は「あ、はい」と頷き、樹利は「愛羅かぁ」と顔をしかめた。
そんな樹利の姿に、
「どうしたの?」
と身を乗り出すと、
「あ、いや。
撮影はいつも見学してるから分かるだろ?指示通り動くだけで大丈夫だからな。
要求以上のことをしなくていい」
と樹利は可愛の肩に手を乗せた。
「うん、分かった」
「あんまり気負うなよ」
そう言って可愛の背中を軽く叩いた樹利に、遠巻きに見ていたスタッフ達は、
『なんだあれ?』と小首を傾げていた。
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