十六夜(いざよい)の月

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その時、ヘッドフォンで何を聴いていたのか、自分でもよく覚えていない。 眠れない時間をやり過ごしたくてただぼんやりとカーペットに座り、ベッドに寄りかかっていた。 カーテンを付けていない窓から見えるのは、満月から1日欠けただけの月。 この土地の2月の大気は月の光まで凍らせてしまうのだろう、きっと。 僕はだから、扉を開ける音もさせず、足音も立てずに入ってきた流里(るり)に全く気がつかなくて。 すっと外されたヘッドフォンでようやく自分の目の前に、彼女の存在を認めた。
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