ハンドルを握る女

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《レオ! おいレオ! 聞こえてるか!?》 耳から漏れるパートナーの声。 そこでようやく我に帰るレオ。 ジジの背後からはまた大歓声が漏れていた。 パーチェ広場のライブプロジェクターは、先程のムルシエラゴのドリフトもでかでかと映し出していたらしい。 「ああ。聞こえてるぜ、ジジ」 《ドライバーは?》 「間違いねぇ、あの女だ。窓開けてウインクしやがった!! ナメてやがる!!」 《マジかよ……》 視線は依然前を走るムルシエラゴへ。 まただ、またブレーキランプが点滅している。 繰り返すようだが向こうは670馬力の怪物だ。 ヤツが本気で引き離そうと思えばすぐに引き離されるだろう。 直進性能だけはクソ女にアドバンテージがあるということは、スタート時から既に分かっていること。 クソ女の真意は分からない。 また差を付けられたが、広がりはしない。 この差はコーナーで付けたものと誇っているかのようだし、実際もそうである。 《まあいいさ。反則がないなら関係ない》 「クソっ……俺を挑発しやがって! 許さねぇ!!」 《おいレオ、聞こえてんだろ?》 「なんなんだよあの女は!? なんなんだよ……あのムルシはよぉ!!??」 《チッ……レオ!! お前の仕事は女を潰すことじゃねぇ!!!!》 ……嗚呼、またか。 レオはハンドルから手を離し、バンダナの結び目を絞めた。 そうか、忘れていた。 本来の目標を。 「悪い、そうだよな。今日の敵はタイム一択だ」 《その通り。レオ、何も起きなけりゃ4分半は切れる。4分半切ることだけがお前の仕事だ》 「おう。ヤツは見逃しとくか?」 《だな、勝手に走らせといたほうがいい。あのペースなら、4分半どころか4分ジャストでも不思議じゃない》  
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