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「せ、先輩からでいいですよ」
「いや、星川くんからでいいよ」
「い、いや、俺の本当くだらないんで先輩からで」
「わ、わかったわじゃあ…」
「私のこと名前で呼んでくれない?」
え?今なんて言った?
名前で呼んでとか聞こえたような…
気のせいだよな!?俺に限ってこんなラブコメ主人公みたいなこと…
「せ、先輩今なんて?」
「だーかーらー!私のこと名前で呼びなさいって言ってんのよ!」
こ、これは夢ですか。
バチッ
「痛っ…」
頬を全力で平手打ちしたら皮膚が裂けるぐらい痛かった。
「そ、そんなに嫌なの…?」
先輩は、赤くなり始めてる目を少しふせて悲しい顔で俯いた。
「い、いや、ち、ち、違…」
まずい、ろれつがうまく回らない。
誤解だ!
早く誤解を解きたいのに、なんで俺の体はいうことを聞かない!
「い、嫌って言うなら、いいんだけどね…」
いいわけ…ないじゃないですか!
いいならなんで、そんな悲しそうな顔してるんですか…
「そ、そんなことないです!美咲さん!」
やっと…言えた。
「ぇ?」
「だから、先輩をこれから美咲さんって呼びますよ!」
先輩、いや、美咲さんは、俯いていた顔を上げて
向日葵のような笑顔でこういった。
「わ、私もかわりに祐樹って呼んであげるわ!」
太陽に劣らないぐらいの眩しい笑顔に俺は見とれてしまった。
いや、見蕩れてしまったのだ。
「み、美咲さん!」
「な、なによ祐樹。」
こうして俺は、生まれて始めて名前を呼んでくれる人ができた。
そして、苗字でしか呼ばれることのなかった俺は、何度も呼んで欲しかったのだろう。
「み、み、美咲さん、美咲さん、美咲さん!!
「な、何回も呼ばないでよ!」
バチッ
「ひでぶっ」
真っ赤な顔で、頬を叩かれた。
ここで、ひとつわかったことがる。
美咲さんが暴力を振るうときは照れてる時だと。
つまり、暴力は照れ隠し、いや、愛情表現なんだと。
いや、それは、考えすぎの自意識過剰か。
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