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行き場を失った悪寒が、首筋から指先を震わせる。
「エディ、家には二人しかいなかったよね」
「心配ない。あの女共は、強いから」
言葉に反して声色は危うい。眠っているであろう彼の姉と母親の無防備さを思うと、自ずからケイの胸も疼く。
「長老に伝えたほうがいいかも」
「いや……気づいてるはずだ」
長老が気づいている。そうだとしたら心配することはない、とケイは思う。だが、未だ見えない敵は恐い。
「その上で何も動かないんじゃないか?」
だといい、とは思う。しかし緊急のときに楽観的になることは許されない。
「見えるまで待とうよ」
「奴らが?」
「うん」
エディは首を曲げてパキパキと音を立てる。不安をごまかしているのかもしれない。
「それしかないな」
呟かれた同意に、ケイは頷く。今は、悔しいがおそらくどうすることもできない。
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