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「あれは」
エディが指さす先には、そっとひとつの家から出ていく人影があった。
「長老の家だ」
「タムだよね?」
それは“奴ら”の誰かでもう彼らを殺した後で……という恐ろしい想像を打ち消す。
「そう見える。どこへ?」
気配を消すように彼は森の方へと歩き出した。用心深く、辺りをキョロキョロと窺う。
「だめだ、危ない」
とエディは言う。気配が“奴ら”の重要人物でもそうでなかったとしても、出会えば命がないということに変わりはない。しかし思うに、
「見回ってくれてるんじゃない?」
「それでも危険だ」
タムは家々の裏を巡り歩く。
「短剣くらいは持っているんだろうな?」
その言葉に自分のものを探しかけるが、タムのことを言っているのにハッと気づく。月が明るいとはいえ、それは見えなかった。ただ、普段彼が刃物を携えるのを嫌うのを二人は知っている。
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