第1章 ケイ・ソルガイア

14/20
前へ
/131ページ
次へ
タムがこちらから見えない陰に入る度に肝を冷やす。気が気ではなかった。 「気配は弱まってるな」 悪寒は退いている。ケイはうん、と答えた。 「遠くに行ったのかもしれない」 うんうん、と生返事を返す。 と、タムが一度立ち止まり、再び歩みを進める。湖を迂回すると、 「森に……」 入っていった。その姿は木に紛れ、闇に溶ける。 「嘘だろ!?」 「わ、あ!ちょっと」 彼が身を乗り出したことで、台が大きく揺れる。 「何考えてあんなことを」 声にはさっきまでの不安に、苛立ちが混ざっている。 「確かに無茶だね」 「あの命知らず」 二人は口をつぐみ黒一色の森を見つめる。少しの風さえ吹かず、まるで時間が止まったようになった。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加