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緊張を解くわけにはいかない。気配は確かだったし、森にいるという危険も完全には消えていない。
あれは、とケイは考える。あれはただの下級兵士の気配ではなかった。ともすれば幹部の、
「ラノ……かもしれないな」
エディがそのことをそのまま口にする。
奴らは名を“セロ”という。恐ろしい殺戮集団であり、ごく稀にではあるが夜に村を訪れて虐殺を行う。
正体の分からない黒に身を包んだ兵士たちから成る組織。村はずっと昔から、その脅威に怯えてきた。
ケイの両親やタムの父親など、村では何人もが彼らに命を奪われている。
「あいつならまた来かねないんじゃないか?」
「どうかな」
幹部であるラノは、無茶苦茶な奴だ、という。現にその“気分”で仲間を失ったこともある。
セロは敵だ。気配を感じたら逃げろ、戦おうとするな。と、ケイ達はそれだけを教わってきた。
また、ラノを見たら命はないと思え、と。
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