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ラノ。ローブの袖を捲り、腕に空色のバングルをしているという。彼はセロの構成員である。鈍器のような剣で人を嘘みたいに殺す、そうだ。
セロについての情報のほとんどは、村の大人がたかって一人の下級兵士を押さえつけ、拷問して得たという。人道に反するとも思うが、犠牲を最小限に留めるための策だ、と長老は言ったらしい。
すべては聞いたことだ。
兵士に村を襲われたことも、また一度ラノが来たこともある。しかし当然、ケイもただ逃げただけだった。
「でも」
ケイは口を開く。
「今夜はもう大丈夫な気がする」
二人は村を見渡した。
気配は、普段どおりと言っていいほどに薄まっている。首筋に感じていた悪寒ももうない。
「戻るのか?」
「いけない?残業して疲れたんだ」
「……そうだな」
エディは今晩で何度目かのため息をこぼした。ケイは狭い台の上で腰を上げ、エディの後ろに下がる。
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