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「……寒いな」
夏の夜にしては冷たい風に、彼は身を震わせる。
足を伸ばすように座り直すと、木で出来た物見台がミシリと軋んだ。
ケイ・ソルガイアは見張り番として、既に長い間そこに座っていた。
今日の番は皆が眠り始める頃に始まり、真夜中をいくらか過ぎるともう一人の番と交代になる。
と、風向きが僅かに変わった。ふわりとケイの赤毛の髪を浮かせるその風もやはり、変わらず冷たい。
相棒はまだか、と、今日も何度もしたように集落を見つめる。
こちらに歩いてくる少年の姿がないか目を凝らすが、あるのはいつも通りの家々の影だけで、依然として動きはない。
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