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彼はケイと同じく村の数少ない若者のひとりだ。
ケイの親友で、見張り番の相方でもある。
彼は名をエディと言った。
ケイよりひとつ年上で、体もひとまわり大きい。長い手足を持て余す格好は、中背で華奢なケイには真似できなかった。
足音と荒い息が、こちらに近づいてくる。
「また寝坊かな……」
ケイはそう呟いた。エディは寝ぼすけだ。と、思っている。“眠い”と彼が口癖のようにぼやく言葉は、近頃ケイにも移りつつあった。
丘は一部が崖になっていて、上るには後ろを迂回しなければならない。
だから、この物見台から眺めて感じるよりも村からの道のりは長い。走れば息も上がるだろう。
……と、台が大きく揺れた。右、左と横に振れ、木はミシミシと音を立てる。震源である早い息づかいが上ってきた。
首を捻らせて後ろを見ると、エディが梯子の足場から顔を覗かせている。
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