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「寝てた」
エディは息を弾ませたまま、それだけを言った。
「何回目だよ、それ」
思わずクスリと笑う。
「知らね。そうだ、ケイもこの前」
「え?いつ」
「一年前だな、あれは」
エディは得意気だ。
「そんなに昔の?忘れたよ」
「俺は覚えてるな。暑い夜に……」
「何それ、忘れた忘れた」
ケイは言いながら、エディの場所を空ける。
「昼間にずっと水を運んでた日だったな。確か、玄関で寝てたって……」
「ああー、うるさいってば!」
ケイは顔をしかめる。
それは真夏の夜のことだ。気がつくと小屋の入り口に突っ伏したまま、夜を明かしていたのである。
「まあ、あれだ。お互い様じゃないか」
「エディは寝過ごしすぎ」
かもな、と彼は苦笑を漏らす。
この交代の時間に喋るのが見張り番の日の習慣であり、唯一の楽しみだった。
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