プロローグ

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「爺、そなたの場合、季節を問わず寝床から出るのに苦労をしているように思うが・・・今朝も辰の刻前(午前8時前)だというのにまだ起きて来ないと女中達が騒いでおった」 「えっ、あっ、いやぁー、『春眠暁を覚えず』といいますからなあ・・・はっはっはっ」 大目付の爺が頭をかきながらばつが悪そうな顔をしているとき、老中に一人加納久通が報告にやってきた。 「殿、庭での宴席の準備が整いました。大岡様もお越しです」 爺がばつが悪いのをごまかすかのように吉宗を急かす。 「そうか、大岡越前守(えちぜんのかみ)も来ておるのか。 ささっ、殿、今日の酒はさぞ旨いと思いますぞ。さあ、急ぎましょう」 そう言って爺が吉宗の背中を押して宴席へと促すと、吉宗は笑みを浮かべながら宴席へと向かった・・・。
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