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ミルはひとり暗闇の中をさまよっていた。
時計は午前二時を回っている。
『草木も眠る丑三つ時』とは、昔の人はよく言ったものだ。
確かにしんと静まり返った森の中は草木さえ眠っているように感じられる。
そんな中明かりも持たずに、手探りで進むミルは心細かった。
『明かりがあるかないかだけでこうも違うものか?』
ミルは心の中で毒づいた。
静まり返った森の中にフクロウの声がけがこだまする。
かれこれ一時間以上はさまよっている気がする。
しかし、休めそうな場所を見つけることができない。
半ばあきらめかけていた頃だった。
木の枝からツタのようなものが飛び出してきたのだ。
ミルはとっさに右腕でそれを受け止める。
受け止めたのとほぼ同時に右腕が燃えるような熱さに包まれた。
そう、ヘビが襲い掛かってきたのだ。
ミルは、ナイフを左手に持ち替えてヘビを切り裂いた。
これにはミルも驚いた。
夜の森は気を抜けない。
ましてや火を使えない状況では特にだ。
手当をしたくとも明かりがないと手当はできない。
ジンジンと熱くなる右腕。もしや毒蛇だったのか?
ミルは一瞬背中が凍った。
やむを得ず、たき火をすることにしたミル。
ペンライトを取り出し、明かりをつける。
まずは右腕の様子を見る。
ヘビに噛まれたところからは血があふれ出ていた。
「とにかく止血を」
ミルは濡れた衣服を引き裂き、右腕を器用に縛る。
『戦場では気を抜くんじゃねえ。たとえ一瞬でもそれが命取りになるからな』
リュークならそう言うだろう。
とりあえず手近な枯枝を集めて、たき火の準備を始める。
夜明けまでまだ五時間近くある。
それまで濡れた衣服のままでは体温が奪われ、体力を消耗してしまう。
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