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『こんにちは、お嬢様方』
無機質な声が聞こえる。
感情なんて籠ってないのにそれが身を震わせた。
後頭部に走る鈍い痛みと手首についた縄の後でやっと先程の出来事を思い出す。
▽
数時間前ーーー…
私は友人4人と買い物に出掛けていた。
金曜日の夕方だと言うのにも関わらず帰りの電車には誰も…そう、私達以外の誰も乗っていなかったのだ。
少し不気味には思ったがその時はラッキーと思うだけで特に疑問を感じる事はなかった。
目的の駅に着こうとした丁度一駅前で私達を乗せる電車が急停止した。
アナウンスによると、人身事故だと言う。
母に帰りは少し遅くなる、とメールを入れようとしたのだが生憎携帯は圏外。オマケに充電も切れかかっていた。
友人から携帯を借り、電波のいいところを探して動き回る。
どこの車両に行っても人は乗っていなかった。
やっと電波のいいところを発見し母にメールを送る。
さて、皆のところに帰ろうと後ろを振り向こうとした瞬間…硬い何かで後頭部を殴られた。ぼやけて朦朧とする意識の中最後にみたのは黒いスーツに身を包んだ複数の男だった。
▽
そこで話は冒頭へと戻る。
重くて所々痛む身体を起こすとそこは見慣れた私が通う学校だった。
黒板にされたニコちゃんマークの落書きは私が今日学校を出る前に描いたものだから私のクラスで間違いはないのだろう。
ボーっとその場に座っていると前方の扉が音をたてて開いた。
「あ、起きたんだね!もう、心配したんだからね?中々起きないし…」
入って来たのは一緒に電車に乗っていた友人1号の歩(あゆみ)だった。
「…あ、ごめんね?って、アレ?なんでここに?」
「それが分かれば苦労しないって~、気付いたらここにいて。皆も何がなんだかわかんないみたい」
「へ?み、皆って?」
嫌な予感がした。
ここに歩がいると言う事は…皆と言うのは…
「あ、亜美ちゃん!オハー」
「お、起きたんですね。よ、良かったです」
やっぱりあの時一緒にいた美穂(みほ)と友梨(ゆり)だった。
「…どうして、私達こんなところに…?」
そういえば目を覚ます少し前に無機質な声が聞こえた気がしたのだが…
教室のスピーカーに目を向ける。
『皆さん、おそろいですね』
…歩達は驚いた様に声の発生源であるスピーカーを見つめていた。
『私の名前は…そうですね、オーナー、とでも呼んでもらいましょうか。貴女達をここに招いたのは他でもありません』
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