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嫌な予感がしたが、もうここにいる時点でそれを回避するなど不可能なのだと諦めた。
無機質な男とも女ともとれるその声に私達は耳を傾けた。
『今からゲームをして遊んで頂きたいのです』
「…ゲーム…?」
怪訝そうな美穂の声に歩が続く。
「誰だかわかんないけどアタシ達は遊びに付き合ってるヒマなんてないよ」
『まぁ、そう仰らずに。何も私は無償で貴女方にゲームをしていただこうなんて考えておりません』
「ど、どういうことなんですか!?」
『このゲームの勝者はどんな事でも一つ願いが叶えられます』
私はゴクリと唾を飲む。
皆も心無しか顔色が変わった。
『例え死んだ人を生き返らせる事も、気に入らない人を殺す事も、何もない世界にする事も、不死身になる事も…叶えられます』
……死んだ人を生き返らせる……
その言葉に心臓が大きく脈打った。
私が勝てば…願いが叶う?
『そこでその勝者を決めてもらうのは簡単なゲームです。【鬼ごっこ】、これをしてもらえばいいだけなんです』
「鬼ごっこ」
『そうです。ルールは簡単ーーー』
そのルールをまとめるとこんな感じだ。
今から私達四人は誰か一人になるまで続く鬼ごっこをしてもらう。故に制限時間は無い。
放送室、音楽室、保健室、体育館…この四ヶ所に箱を用意してあるらしい。
その中身は見てのお楽しみとの事だ。鬼の人の箱には赤い紙が入っているらしい。
この無機質な声がゲーム開始の合図となる。
「…でもそれって鬼が残るに決まってるんじゃないの?」
『いいえ、鬼が残る以外に別の人が残る可能性もありますがそれは御自分でお考え下さい』
そこでプチッと音がしてマイクが切れた事を示した。
「ねぇ、どうするの?」
私の問いかけに彼女達は言った。
やるに決まっていると…、
▽
取り敢えず黒板にあみだくじを書いてそれぞれが何処の箱を開けに行くかを決めた。
「あ、ボクは放送室だ!」
「私は音楽室だね」
「わ、私が体育館で…」
「残りの保健室がアタシね」
上から美穂、私、友梨、歩の順だ。
「じゃ、また後でね」
その言葉で皆はそれぞれの箱の場所に向かった。
▽
三年間合唱部だった私は先日、部を引退し今では授業以外では近寄らない音楽室に来ていた。
「箱~…箱~…あ、あった」
茶色の鉄で出来ている箱の中には…折りたたみナイフ。赤い紙はーー…無かった。
「…え?」
どうしてこんなものが箱に入っているのか…
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