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「すげー…」
隣で同じように空を見上げていた快(かい)が、しみじみとそう言って目を細めた。
信州の夜は東京のそれとはまるで違う。
見える景色も、空気の匂いも、耳に入る音も、何もかもが違いすぎて、さっきまで自分のいた場所がまるで嘘みたいだ。
無数の虫の声が、耳の中で反響するように鳴り止まない。
それでもその音は不快ではなく、むしろ私たち2人だけのこの空間が気まずくならないようにと気を回してくれているかのようだった。
深夜11時にこんな公園の駐車場にいるのは、私たち2人だけだった。
私たちには、今日、どうしてもここに来なければならない理由があった。
東京から高速を飛ばしてでも来なければならない理由が。
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