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「たぶんそうだよ。里佳(りか)に返事するつもりが、間違って俺にしたんじゃねーの?相変わらずバカ兄貴だな」
ははっと笑うと、快は夜空に向かって、バーカ!と言い放った。
「バカは余計だよ。稜が怒るよ」
「いいんだよ。バカなんだから」
そう言うと快はもう一度笑った。
その笑顔があまりにも切なそうで、私は自分の鼻の奥がつんと疼くのを感じた。
「手袋、やっぱりするね。ダッシュボードに入ってたよね」
暗闇でも、快はきっと私の小さな変化を見逃さないだろう。
視界がうっすらぼやけそうになっていることに気付かれたくなくて、私は手袋を取りに行くのを口実に快に背を向けた。
「里佳」
背を向けた瞬間、快の声が私を呼び止めた。
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