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「あっ、快もするよね。手袋。一緒に持ってく…」
言い終わらないうちに、快のダウンコートがギュッと音を立てて背中から私を覆った。
…ダメだ。
そう思った瞬間、堰を切ったようにポロポロと涙が零れ落ちた。
溢れ出した涙は、止まることを忘れてしまったかのようにはらはらと頬を伝い、足元のアスファルトに静かに落ちた。
快は後ろから私を抱き締めたまま、何も言わなかった。
ただ黙って、泣き続ける私を守るように抱き締めてくれていた。
私はその温もりに、もう二度と会えない愛しい人の面影を何度も何度も重ねて祈るように願った。
会いたい、と。
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