青年の終止符

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変わらない日常、弟との何気ない時間 俺は弟と二人暮らしをしている 俺の母は病死、父は事故死で、二人とももうこの世にはいない 先に父が死んでしまったが、その時の母の泣き叫ぶ姿を、幼かった弟は覚えていない 母が亡くなったのは、弟が幼稚園児だったころである 母親似で母のことが大好きだった弟は、母が死んだ日、父が消えたときの母のように泣き叫んだ そして時は過ぎ、今現在、弟の稀代(キシロ)は小学六年生 命を大事にする可愛い弟である 「お兄ちゃん」 「ん?どうした?」 ついでに俺は今、高校三年で、進学は視野になく就職活動で少し忙しい まぁほぼ決まっているが… 庭にある桜は花がすべて散ってしまい、いまは葉も紅く染まっている そう、今の季節は秋である 「見て!これこれ!お兄ちゃんの真似して作ってみたの!」 「これは…シフォンケーキ? へぇ、なかなかうまく作れたじゃないか」 「えへへ」 結構器用な稀代は、俺の教えたことはほぼ一発で覚える まったく、よくできた弟だ
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