お持ち帰り

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 カタカタとキーボードを叩く音が部屋にこだまする。男は一人、大きなため息をつき画面を見つめる。  何もないなあ。今度のデート、どこ行こっかなあ………ん?  男の眼球が動きを止める。そこに映し出されたのは、とあるホームページ。  “当店のウリは最高級のお肉。お客様のご来店、お待ちしております”っと。ネットの批評を調べてみると、“虜にされるおいしさ”、“お持ち帰りがお得”、“店の前に、満足するまでお客様は帰しませんって書かれてる”などなど。何だか良さそうだな。値段も高くはない。ここにしよう。  その週末。車を降りた男と彼女は店の前にいた。 「こんな、隠れスポットがあったとはなあ」 「なんかワクワクしちゃうね」  カランコロン。店内に入る。安らかな音楽が耳に入る。それに重なる貴婦人の会話。老夫婦の笑い声。天井にはたくさんのシャンデリア。壁のステンドグラスが月明かりを吸い込む。目の前には爽やかな笑顔の青年がいた。 「いらっしゃいませ、小野様ですね。当店のご予約ありがとうございます」  思っていたよりも、ずっと高級な所に来てしまったようだ。脇汗がTシャツに染みる。 「すいませんが、こんな場違いな格好では……」 「当店は、料理を召し上がるまで帰れない規則となっております」  そういえば、そんな注意書もサイトに載っていた。
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